ニーズから考える mol という数
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ニーズから考える mol という数
おそらく、化学という学問を修めるときに一番最初につまずくのが mol
という数です。
1 mol は、12グラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい物質量である。
という記述は、多くの高校生を悩ませるものだと思います。 (新定義とは異なりますが、わかりやすさを優先して旧定義で記載しております)
mol は SI単位系を構成している重要なものです。 しかし、ニーズがわからないまま上記の定義を聞いても理解が追いつかないと考えています。
そのため、ここではニーズから mol というものを紐解いて見たいと思います。
ケーキ作りと物質量
ところで、私の趣味にお菓子作りがあります。 休日など、キッチンでケーキを焼いています。
ケーキは正確な比率で材料を配合することが何よりも重要です。 料理とは異なり、目分量で図ることも、味見で調整することも出来ません。 正確に材料を図り、1g、1cc 単位で材料を混ぜていきます。
材料を図るときは、測りや軽量カップで計測します。
例えば、『薄力粉 70g』『卵 3個』『砂糖 70g』『牛乳 120cc』といった感じです。
卵は、1個、2個と個数を数えることが出来ます。 しかし、私には小麦粉の粒子の数や、牛乳の乳脂肪の数を数えることが出来ません。
小麦粉は、いっぱいの粒子を集めて『70g』。 牛乳は、乳脂肪や水分を集めて『120cc』としか数えることが出来ません。
これは、化学反応においても同様です。 化学反応も、ケーキと同じく材料を正確に測る必要があります。
しかし、分子も小麦粉と同じく細かいものですので、個数を測ることは出来ません。 そこで、重さ(質量)や体積で換算する必要が出てきます。
mol とは、『重さ』や『体積』といった測れる値からそこに含まれる原子や分子の個数を逆算するために存在しています。
mol とはなにか
mol とは、個数のことです。 『1ダースが 12個』『1グロスが12ダース』のように、『1molは6.02×10 23 個』それだけです。
炭素が 1mol で 12g のように、その原子や分子は固有の単位重さ(1mol 集めたときの重さ)を持ちます。 1mol あたりの重さがわかることで、重さから個数を逆算できるのです。
1mol あたりの重さは物質の特性として記録されているため、 たとえば、『炭素原子は 12 g/mol』『水は 18 g/mol』『二酸化炭素は 44 g/mol』と決まっています。
このように、その物質を 1mol 集めたときの質量の事を『モル質量 [g/mol]』と呼びます。 正直なところ、学校では計算方法を求めますが、調べれば出てくる値なのでさほど重要とはなりません。
これら決まっている事で 12g の炭素があったら 6.02×10 23 個の炭素原子があると逆算できるのです。
個数を都度計算するのが面倒な(というより必要とする場面がほとんどない)ため、 6.02×10 23 の個数のことを 1mol と呼びます。 『2ダースが 24個』あるように、『2mol は 12.04×10 23個』の原子や分子の個数を表しています。
このとき、 1mol や 2mol のことを『物質量』と呼んでいます。 (物質量は個数なので、無次元数となり次元はありません)
mol があると出来ること
ここまでで記載したとおり、 mol があることにより 『重さや体積から原子や分子の個数を計算』することが出来るようになりました。
たとえば、『水素と酸素を 2:1 で混ぜ合わせて水をつくりたい』といったときに、 水素の原子の個数や、酸素原子の個数を数えることは出来ません。
しかし、体積から水素原子の個数や、酸素原子の個数を求めることが出来ます。 また、生成された水の重さとモル質量から、水の原子の個数を求めることが出来ます。
毎回、掛けたり割ったりする必要がないため、個数をまとめて mol で数えます。
コレにより、計算が楽になり、化学反応のみに着目して実験や計算ができるようになります。
まとめ
過去の化学を挫折した自分に対する、今の自分からのアンサー記事です。
現代において、自分から情報収集をしないと、『決まったこと』ばかり話をされ、『なぜ?』が抜けることが多々あります。
『なぜ?』を理解していない知識は表面的なものになり、活用が難しい場合があります。
『ときには、定義から物事を理解するより、ニーズから求めたほうが分かりやすいこともある』という話です。
以上
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