January 20, 2021By Shirousa← Back to Blog

コロナに石鹸が効いて、ノロウイルスには石鹸が効かない理由


目次

コロナに石鹸が効いて、ノロウイルスには石鹸が効かない理由

マスクや手洗いが推奨される昨今ではありますが、コロナウイルスには石鹸やアルコールが有効で、ノロウイルスには石鹸もアルコールも意味がないのは知っていますでしょうか?

これは、ウイルスの構造により効果のある対策が異なるためです。 ここでは、ウイルスの分類と、その特徴について、簡単に説明したいと思います。

※この記事は、あくまで個人のブログです。 自身の健康については必ずお医者様に相談してください。

ノロウイルスとコロナウイルス

ウイルスを分類する特徴の一つにウイルスの構造があります。 主な構造は2種類で、今回紹介するカプシドウイルスとエンベロープウイルスです。

ウイルスの基本構造は、『遺伝情報(DNAやRNA)』とそれを包む『カプシド(殻)』からなります。 遺伝情報とカプシドだけからなるウイルスを『カプシドウイルス』と呼びます。

ウイルスの中にはカプシドの周りに感染した細胞の脂質二重膜(細胞膜)をまとう物があります。 カプシドを包む脂質二重膜をエンベロープと呼び、そのようなウイルスを『エンベロープウイルス』と呼びます。 エンベロープとは封筒のことで、カプシドウイルスが封筒に包まれたようなイメージです。

覚える時に重要なのは、カプシドはエンベロープウイルスも持っていることを忘れてはいけません。

脂質二重膜を持っているか否かですが、これがウイルスの対処方法を決定する重要なものです。

カプシドウイルス

カプシドウイルスの有名なものでは、ノロウイルスがあります。

ノロウイルスには石鹸やアルコール消毒が無意味なことは有名です。 その理由は、ノロウイルスにエンベロープがなく、カプシドで構成されたウイルスであることが大きいです。

カプシドはタンパク質の膜であるため強固な構造をしています。

石鹸やアルコールは脂質二重膜を分解するのに特に顕著に働きます。 洗剤が油分を溶かすように、脂質二重膜を壊すことで無効化するのです。

しかし、カプシドウイルスは脂質二重膜を持っていないため、無効化するために次亜塩素酸ナトリウムを利用する必要があるのです。

カプシドを外殻にもつウイルスに石鹸やアルコールは無意味なのです。

エンベロープウイルス

エンベロープウイルスの有名なものでは、コロナウイルスがあります。

コロナウイルスは昔から、アデノウイルスとともに風邪症候群の主たる病原菌です。 (アデノウイルスはカプシドウイルスなので、予防はこちらのほうが難しいです)

エンベロープウイルスは、その感染機序としてエンベロープが標的細胞の細胞膜と融合(膜融合)する必要があるため、エンベロープが壊れると感染能力を失います。

そのため、石鹸やアルコールといったエンベロープに作用するものが効果的に働きます。

注意頂きたいことは、次亜塩素酸ナトリウムもアルコールも人体に有害です。 人の細胞膜もエンベロープウイルスがまとう脂質二重膜も同じものです。 (エンベロープウイルスは出芽の際に感染細胞の細胞膜をまとうため。)

そのため、ウイルス対策のためのもの。例えば次亜塩素酸ナトリウムなどを人や人のいる空間に散布するのは有害です。

ウイルスに効くものは人にも効いてしまうのです。

エンベロープや細胞膜は、それほどにも弱く、何でも効いてしまうのです。

PCR検査と暗黒期

昨今、PCR検査という言葉ばかりが独り歩きしていますが、どのような検査かしらない人も多いと思うのでざっくりとお話したいと思います。

また、なぜ全数検査を実施しないのかにもふれたいと思います。

ポリメラーゼ連鎖反応

ポリメラーゼ連鎖反応という反応をご存知でしょうか?

ポリメラーゼという酵素は DNAを合成する酵素です。 1本鎖DNAを見つけ、それを鋳型として2本鎖DNAを合成します。 DNAを開始する時点は開始地点を表す プライマー(DNA断片)を入れておくことで制御することが出来ます。

DNAは温度によって2本鎖になりやすかったり、1本鎖になりやすいといった特徴を持っています。

温度を上げて2本鎖DNAを1本鎖DNAに分離。 温度を下げて、1本差DNAとプライマーを合成。 温度を少し上げて、ポリメラーゼによってDNAを合成。

この反応を連鎖させることで少量のDNA破片から大量のプライマーによって指定された部位を合成する事ができます。 ポリメラーゼ連鎖反応法は、温度管理だけで目的のDNAを大量複製できる、画期的なDNA増幅法のなのです。

この反応のことをポリメラーゼ連鎖反応法、『PCR法』と呼びます。

『PCR検査』とはPCR法で増幅されたDNAを検出する方法なのです。

緊急連載 『新型コロナウイルスと分子科学』 - 日本分析化学会

偽陽性と偽陰性

PCR法に限らず、すべての検査に100%正確な検査は有りません。

あやまって陽性となることを偽陽性、False Positive とよび、 あやまって陰性になることを偽陰性、False Negative と呼びます。 コンピュータウイルスなどでも、同様の用語を用いたりしています。

ここで算数の問題をしてみたいと思います。 たとえば、とある検査法が 10% で偽陽性となると仮定し 1億人に検査したら陽性者は何人になると思いますか? なお、本当に陽性者は 0人とします。

この場合、100,000,000人 × 0.1 = 10,000,000人が陽性となります。 本当の陽性者は 0人のはずなのに、1000万人の陽性者であふれかえることとなります。

これは極端な例ですが、現在の状況も同じ状況です。 国民全員に PCR検査を実施していないのは、することに意味が全く無いからなのです。 (無症状の人に検査しても、そのほとんどは偽陽性であり、陽性者はそのごく一部)

暗黒期

ウイルスには検査を阻む厄介な性質があります。

ウイルスは、感染、増殖、発芽のサイクルを行います。 厄介なのは、感染、増殖時にウイルスがいなくなることです。

感染、増殖している間、ウイルスは DNA断片として細胞に取り込まれ、DNA複製を行っています。 その間、ウイルスの粒子は細胞外にないという状況が発生します。

たとえば細菌の場合は分裂するたびに倍々と増えていき、増える過程でも検知することが可能です。 しかし、ウイルスは、DNA断片に姿を変えて消えたように見える時期が必ずあります。

この期間、ウイルスを検知できなくなることから『暗黒期』とよび、ウイルス感染の特徴の一つとなっております。

昨今、陰性を証明させる陰性証明なるものが流行っています。

しかし、暗黒期という特徴により、陰性の証明に全く意味がありません。 暗黒期はいかなる検査でも陽性を検知できず、偽陰性になります。

もっとも、感染性をもった排菌は症状が出てからですので、 症状の有無(ガイドラインによれば 37.5度以上の熱や風邪の諸症状)で判断されるのが良いと思います。

コロナは飛沫感染が主たる感染経路ですので、いずれにしてもマスクの着用をお願いいたします。

天然痘とコロナウイルス

哺乳類などの遺伝情報といえば DNAだけですが、ウイルスにはDNAウイルスとRNAウイルスがあります。 RNAとは、DNAと同じ遺伝物質ですが、1本鎖で構成されており変異しやすい特徴を持ちます。

DNA と RNA はその安定度が全く異なるため、進化の速度が全然違います。 RNA は不安定で、どんどん形が変わってしまうのです。

ここでは、遺伝物質の差による対応の難しさについてお話したいと思います。

DNAウイルス

DNAウイルスの典型といえば天然痘ウイルスがあります。 天然痘は種痘という世界初のワクチン接種が行われた病気でもあります。

天然痘に種痘が有効だった理由の一つに、DNAウイルスであるという事実があります。 DNAウイルスは、2つの意味で予防が効果的です。

DNAウイルスは、その構造が変化しにくい特徴があります。

DNAは哺乳類などの生物で利用されているほど安定しており、突然変異が発生する確率が低いです。 そのため、DNAウイルスは進化が遅く、対応が容易なのです。

また、DNAウイルスは変異が遅いことから免疫が長く続く特徴があります。

ウイルスや細菌に対する免疫機能の影響が大きいものにB細胞の『抗体』を用いた『液性免疫』があります。 抗体というマーカーを細菌やウイルスに取り付け、白血球を活性化し貪食をサポートするのです。 B細胞の液性免疫には特異性がとても強いという特徴があります。 特定の抗原を持つ病原菌に対してとても強く働き、すこしでも形が変わったものには反応しないのです。

そのため、形が変わらない DNAウイルスは免疫が長く続きます。

RNAウイルス

RNAウイルスの典型は インフルエンザウイルスや、コロナウイルスです。 インフルエンザウイルスは毎年予防接種が必要ですし、予防接種を行っても罹ることがあります。

これは、インフルエンザウイルスが RNAウイルスであるところが大きいです。

RNAウイルスは、RNAが不安定であり変異が発生しやすいです。

そのため、変異株が発生しやすいという特徴があります。 大きなところでは似ているが、細かいところが違うとウイルスとなりやすいのです。

RNAウイルスは変化しやすいため、免疫も上手く働きません。 獲得免疫がついたとしても、抗原の形に変化が発生してしまうことが多いからです。

B細胞が特異的に働くということは、抗原に若干の差が出てしまうと、B細胞が働けなくなるということを意味しています。

ワクチンとはなにか

ワクチンとは、不活性化や弱毒化など影響を少なくしたウイルスやその断片となります。 B細胞がウイルスなどを記憶し、獲得免疫を促すためのものです。

本物のウイルスにかかる場合よりリスクが低く、獲得免疫によりウイルスに対して体が即応できるようになります。

もちろん、ワクチンや予防接種により体が過剰反応したり、ウイルスに負けたり、その成分(卵など)によりアレルギーが出る場合がありますが、リスクと効果を天秤にかけたときに有意なものです。

子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス)や昨今のコロナウイルスワクチンに対して、ネガティブなニュースが多いです。 リスクだけが報じられて効果が報道されないバイアスにより、悪いもの、接種しないほうが良いものと認識されている方も多いです。

しかし、効果と天秤にかけた場合、リスクは過小である場合がほとんどです。 (そのために、治験という段階があり十分に検討されています)

報道のバイアスに惑わされず、正しい判断ができるようになって頂きたいです。

レトロウイルス

ここでは、主題とは異なりますが、私が一番好きなウイルスである、レトロウイルスについてお話をしたいと思います。

遺伝子というのは生命の設計図とも呼ばれており、本のようなイメージを持たれることも多いです。 しかし、遺伝子の中にはトランスポゾンと呼ばれる動く遺伝子があります。

遺伝子の中を転写のたびに移動して、生命の進化を促すような働きをしています。

このトランスポゾンの一部に内在性レトロウイルスというものがあります。 名前の通り、この内在性レトロウイルス、レトロウイルスというウイルスの遺伝子が、生物に取り込まれたものと考えられています。

内在性レトロウイルスは、人を含む哺乳類などの脊椎動物によく見られる構造です。

ウイルスの遺伝子が生物に取り込まれているというと不思議な感じを受けますが、進化に大きな役割を果たしていると言われ、研究されています。

まだ多くのことは分かっていませんが、私が一番好きなウイルスです。

まとめ

この記事は、皆様に正しい知識を付けてほしい意図で書いています。 コロナウイルス(COVID-19)はまだわからないことが多い、未知のウイルスです。

しかし、その特徴や感染予防の方法は、その構造を知っていれば予想がつくところが多いです。

今、世の中には本当にトンデモ情報が溢れており、知識があると馬鹿らしく思えることも多くあります。

正しい情報をもって、噂やトンデモ理論に流されないように気をつけてください。

以上

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