USBメモリのトンネル効果
目次
USBメモリのトンネル効果
ミクロな世界を扱う量子力学という学問があります。
量子力学の世界はこの世界と全く異なる物理法則を持っているかの如く難解なものです。 全てが確立で支配されるその世界は、かの有名なアインシュタインも「神はサイコロを振らない」と言い否定したものです。
量子力学が発生するきっかけがアインシュタインの『光電効果』だったのも皮肉な話です。
この記事では、量子力学とそれがもたらした技術革新について話してみたいと思います。
無限の障壁を超える『トンネル効果』
量子力学の一つに『トンネル効果』というものがあります。
マクロな視点で例を表すなら、柵で囲まれた領域かなと思います。
柵が低ければ、足を上げて柵を越えることが出来ます。 鍛えれば身長と同じくらいの高さの柵も超えられるでしょうか? しかし、無限に高い柵に囲まれた領域には、入ることが出来ないでしょう。
量子トンネル効果は、無限に高い柵に囲まれた向こう側に入ることが出来ます。
無限に高い柵に穴(トンネル)が空いたような状況になるため、トンネル効果と言われます。
USBメモリとトンネル効果
さて、読者の方の中に初代『ポケモン』や『ポケモン金銀』をゲームボーイカセットでやったことのある方はいらっしゃいますでしょうか? ポケモンなどのカセットの中にはボタン電池が入っており、ゲームセーブを行っておりました。
電気を常に供給しないとデータが消えてしまうので、ボタン電池などの電池がカセット内に入っていたのです。
しかし、現代のUSBメモリなどを見ると電池は入っていません。 もちろん、SSDなどにも入っていませんが、コンセントを抜いたらデータが消えたという話も聞きません。
なぜ、電池が無いのに電気信号を保存できるのか。
無限の柵の中に電気を閉じ込めてしまえばよいのです。 無限の柵を飛び超えることは出来ないので、電気は逃げられず、情報が保存されるのです。
フラッシュメモリのプログラミング特性予測技術 - 東芝レビュー
取り出せない『ゼロ点エネルギー』
通常、一番数字少ない数字は ゼロです。
異能力の漫画などでは絶対零度を扱う能力者が力を使うと、全てのものが氷漬けになったり。 真空を扱えば、そこから全てのものがなくなります。
しかし、現実のミクロな世界は異なります。
絶対零度も真空も、ゼロ点エネルギーというエネルギーを有しています。 ゼロ点エネルギーはエネルギーを取り出したりすることは出来ません。 (これは、不確定性原理に起因するエネルギーです。)
これによって普通とは異なる動作をする不思議な物質の話をしたいと思います。
液体ヘリウムの超流動
ヘリウムと言えば、吸うと不思議な声になったり、風船を飛ばす気体として有名です。
ヘリウムを極限まで冷やした液体である液体ヘリウムは不思議な挙動を示します。 液体ヘリウムですが、絶対零度で凍りません。
絶対零度であっても、液体ヘリウムが有するゼロ点エネルギーで振動するため凍らないのです。
また、液体ヘリウムは超流動という性質を示します。 コップに入れた液体ヘリウムは、コップの縁を登りこぼれ出してしまうのです。
また、粘性が 0 になっているため、原子一つ分の隙間があればそこから液体ヘリウムはこぼれだします。
絶対零度でも動き続ける液体ヘリウム、一度見てみたいものです。
真空のカシミール効果
カシミール効果というのがあります。
波というのは、両端が固定されたときに定常波しか生成できないという特徴があります。
そのため、板を2枚並べたときに板の外側は束縛されていないため全ての波が生成出来ますが、 板の内側は両端が束縛されているためにその間の定常波しか生成出来ません。
イメージとしてはギターを鳴らしたときに間が長ければ倍音、3倍音、4倍音と多くの音が鳴らせるが、 間が短ければ倍音を鳴らすのが難しいようなイメージです。
真空は無限のゼロ点エネルギーに満ちています。
通常、ここからエネルギーを取り出すことは出来ません。 しかし、金属板を2枚並べたときにその内側の真空のエネルギーは、その外側の真空エネルギーに比べて小さくなります。
無限のエネルギーなのですが、もてる定常波の差によりエネルギーに差が出てくるのです。 この効果のことを『カシミール効果』といいます。
板の距離が10nm(ナノメートル)になったとき、その力は一気圧ほどとのことです。
電子部品は高精細化が進んでおり、カシミール効果は無視できない力を及ぼします。
まとめ
学問は、どのような偶然で私達に恩恵をもたらすのかわかりません。 何気なく使っているものも、その研究は全く異なる分野から始まっています。
いま利益を与えてくれる学問だけでなく、幅広く調べて見ると世界を変える成果を出せるかもしれません。
以上
本サイトの記事について
本サイトの記事は、プログラミングだけでなく、雑多な雑学を多く配信しております。
もしよろしければ、ほか記事も閲覧いただけますと幸いです。